「起業家が創り出す新しい未来」第5回 株式会社StockBase 代表取締役 関芳実氏
2023年10-11月号
2022年12月、第9回目となる「DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」表彰式を開催しました。全国から届いた多数のビジネスプランの中から、見事「DBJ女性起業大賞」に輝いたのが、株式会社StockBaseの関芳実さんです。ボランティア活動でのご自身の「気づき」を形にするために、大学在学中に起業し、新しい一歩を踏み出しました。関さんの事業は、「私達の身近にあるもので誰かを幸せにできることは何か」ということを、新しい視点から問いかけてくれます。その事業に対する熱い想いや、革新的な取組みなどを、一人でも多くの方に知っていただきたく、今回ご寄稿をお願いしました。是非ご一読ください。
■ 会社設立への想い
「もったいないを誰かのありがとうへと繋げたい」私が起業した最初の想いです。企業内で毎年大量に余る営業用のカレンダーを高齢者施設へ届けたところ、すごく喜ばれました。高齢者の方は、服薬忘れ防止で薬をカレンダーに貼り付けて利用されるようです。企業では廃棄されてしまうモノも、一歩世の中に出れば、他の誰かにとっては必要なモノかもしれない、そう気づかされた出来事でした。そういったモノが循環する仕組みを創りたいという想いで、株式会社StockBaseを設立しました。
組織 | 株式会社StockBase |
本社 | 神奈川県横浜市中区尾上町1-6 YOXOBOXオフィス内 |
設立年月日 | 令和3年4月1日 |
HP | https://www.stockbase.co.jp/ |
(2023年9月現在)
■ StockBaseの取組み
StockBaseは「保有しているモノの処理に困っている企業と、それを必要とする団体をオンラインでマッチングするプラットフォーム」を全国で展開しています。例えば「災害備蓄食」。馴染みが無いかもしれませんが、企業や自治体は、災害時のために1人あたり大体3日分の備蓄食を保有しています。その数は都内の大手企業1社で4万3,000食にものぼります。食品なので期限があるため、一定期間で必ず入替が発生します。「食品なら食べるのが普通」と思われるかもしれません。しかし、個人とは違って大量の備蓄食を保有しているので、「廃棄の方が安くて楽」というのが現状です。大量の保存水の受取手がいないため、「社員の方がペットボトルを1本ずつ開けて、水を流して捨てる」といったこともよく聞く話です。社内で配布しきれなければ「寄付」すればいいのでは……と思いますが、寄付するには1番手間がかかります。食品ロス削減が騒がれるなか、「寄付するのは大変・受取先が見つからない」などの理由から、廃棄を選ぶ企業も少なくありません。
一方で、日本にも貧困の家庭が一定数あり、それを支援する団体も多く存在します。「備蓄食なんて食べたことない!」という方もいらっしゃると思います。私も「備蓄食を食べる方がいるのだろうか」と思っていました。しかし、子ども食堂で備蓄食を配布すると喜ばれ、大学で備蓄食を配ると一瞬で無くなります。中には「家に食べるものがないから」と6食程持ち帰る学生もいました。日本にも「その日の食べ物にも困っている方がたくさんいる」という事を目の当たりにしてきました。
そこでStockBaseは、企業向けの物品活用プラットフォームを運営し、企業や自治体に対して「手間なく効率的に、最適な」寄付を可能とするサービスを提供しています。企業が弊社に料金と配送費を支払い、StockBaseは企業に対して「業務コストの削減」「配送費の最適化」「PR機会」を提供しています。現在は東京・神奈川の企業中心に約70社が導入してくださり、今後も企業や自治体を増やしていく予定です。寄付を受ける側は、全国で300団体にのぼります。まさに、供給と需要をマッチングして、モノを廃棄せずに循環させるサービスです。StockBaseがあることで、企業の「困った」が誰かの「ありがとう」になります。
特に、備蓄食についていえば、これまでは「とりあえず備えておく」という考えが一般的でした。数年前までは、備蓄食の廃棄は「食品ロス」に換算されていなかったという話もあるくらいです。ですが、有事の際には被災者の方に、もし何もなければ社員や支援希望者の方に届けられる食品です。StockBaseは、「出口で誰かが消費する(=食べる)事を考えた備蓄」を推進しています。そのため、購入時にコストだけではなく、美味しさ・食べやすさといった観点で備蓄を選定し、ご提案するといった、備蓄の入口でもお役立ちいただけます。トータルでサポートすることで、備蓄食ロスゼロ・循環型備蓄の実現を目指しています。
■ StockBaseのこれから
近い将来、StockBaseは、備蓄以外のカテゴリも取り扱うことができるように実証を進めています。例えば、余剰食品などの在庫です。また、提供するソリューションも「寄贈」のみならず、「アップサイクル」「資源化」等も展開する予定です。さまざまなソリューションを駆使して、まだ使用できる「資源の無駄」を「必要なところへ最適に活用する」ことを目指しています。
私は「もったいない」という言葉がこの日本から無くなることを夢見ています。ご自身が勤められている企業にもったいないと感じられるモノはありませんか? または、企業内にどのような備蓄があるのかご存知ですか? ふとした瞬間に、「もったいないな、StockBaseなら有効活用してくれるかも」と思ったら、いつでもご相談ください。全国で発生するもったいないを解決するのが、私たちの使命です。
ビジネス経験のない状況で、少しばかりの資金を手に事業をスタートしてから、約2年間多くの方に支えられてきました。StockBaseの想いを語ると、共感者が増え、そのことが私たちの活力になってきました。何かをするうえで「共感」は1番の武器だと思います。「モノと想いを循環させ、豊かさを分かち合う社会」を目指す取組みに共感いただけたら、これ以上嬉しいことはありません。これからも皆さまに愛され続ける企業であるように、毎日夢に向かって進んでいきたいと思います。
関さんに初めてお会いした日のことを、今でも忘れることができません。ご挨拶での柔らかな眼差しは、事業を通しての決意を語り始めた途端、まっすぐ未来を見つめる精悍な眼差しへと変わりました。その時の力強い言葉が、私達の胸に強く残っています。
大学を卒業し、この4月からは経営者一本で歩み始めている関さん。頭の中には、新しいアイディアが常に溢れています。「もったいない」という言葉が無くなり、多くの「笑顔」が生み出される社会にするために、その歩みが止まることはありません。この先もずっと。
今後の関さんに、どうぞご声援をお願いいたします。