編集後記 2024年12-2025年1月号
2024年12-2025年1月号
もしも「イノベーションを起こせ」と言われたら、「そもそもイノベーションって起こすものではなく自然と起きるものだろうし、自分には関係ないな……」と思うであろうと、世にあふれる“イノベーション”という言葉を見聞きする度に、そんな想像をしていました。
しかし、それは以前の話。今号『イノベーション再考 ~人材で未来を拓く~』の編集を通じて、この勝手な想像は覆されました。イノベーションを起こすためには、とかく個々人の努力が必要だということです。紺野氏は、イノベーションを起こすためには経営者に構想力が求められる一方で、個々人の自律的な知を集積させることが鍵となり、そのためには日々のジャーナリングを通じたフィードバックの積み重ねが重要であると述べています(特別記事より)。今号特集では、こうした両利き経営でいうところの「知の探索」ができる人材を育成するための事例を紹介しています。イノベーションのリーダー育成を目指した人材教育を「社内アカデミー」の形で実践する日本郵船グループの取組み(石澤氏)、未来社会を創造する「共創」リーダーを育成するために、業界の垣根を超えて学ぶ場を提供する産総研デザインスクールの取組み(小島氏)、航空業界におけるイノベーション人材の推進に向けて業界横断的な人材育成に挑戦する一般社団法人航空イノベーション推進協議会の取組み(鈴木氏・岩本)、さらに株式会社リコー代表取締役会長の山下氏に、社内のイノベーション改革を長年牽引してきたご経験をもとに巻頭言をご執筆いただきました。
また、株式会社日本政策投資銀行地域調査部に所属していた故桂田さんへの追悼も掲載しております。桂田さんは、スポーツを核とした街づくり「スマート・べニュー®」を推進した第一人者です。この度、お立場の異なる9名の方に追悼いただきましたが、それぞれの方が業界の垣根を超えて、スポーツで未来を拓くという共通の目的に向かって邁進されています。これもひとつのオープンイノベーションかもしれません。(桂田さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。)
内から外に一歩踏み出し、そこで待ち受けている多様性の中で、未来志向の目的に向かって新しい価値を創造するために共創していく―こんな前向きなメッセージを感じていただけるものと思います。ぜひ全体を通してお読みいただければ幸いです。