編集後記 2024年6-7月号

2024年6-7月号

笹野  尚 (ささの たかし)

一般財団法人日本経済研究所(『日経研月報』編集長)

編集部では、毎年、弊財団の地域未来研究センター監修のもとで地域に関する重要なテーマを取り上げています。人口減少問題は、全ての地域の持続可能性にとって大問題ですが、コロナ禍後も東京への一極集中傾向が続くなか、国も地域も、まずは関係人口の増大を目指しています。このことから今号を「地域と関係人口」特集としました。
岡山大学の中村先生は、国の地方創生政策が狙ったような効果を上げていない背景として、自治体の総合戦略の多くが似たような内容で主体性に欠けていることを指摘しつつも、産業連関表の活用などEBPM 的な手法を用いながら、その土地ならではの地域戦略に取り組む動きが広がりつつあることに期待を寄せています。地域の伴走型コンサルティングを展開する㈱さとゆめの嶋田社長と、多くの地域で政策アドバイザーを務める関東学院大学の牧瀬先生は、戦略や政策には差別化が大事であることを実践的な事例から説かれています。自ら多くの地域の「関係人口」となり多拠点生活を実践する㈱エピテックの藤川社長は、公と民で連携して、つきぬけた特長を持った地域こそが選ばれることを、また、道の駅の効果と課題を分析された七十七リサーチ&コンサルティング㈱の佐藤氏は、そこでなければ得られないキラーコンテンツを開発することの重要性を、そして、並行在来線であるしなの鉄道㈱の専務として経営に参画された岡田氏は、地方鉄道が社会から期待される大きな役割を果たすうえで、沿線地域やさまざまな主体との連携こそが重要であることを、述べています。
また、今号では特別研究シリーズ「豊かさの基盤としての生産性を考える」の2本の論文のほか、医療・介護のサステナビリティ、社会関連情報開示の動向をはじめ、さまざまな分野の第一線で活躍する方々に、ご持論を展開していただいていますので、どうぞご注目ください。

著者プロフィール

笹野  尚 (ささの たかし)

一般財団法人日本経済研究所(『日経研月報』編集長)