編集後記 2024年8-9月号

2024年8-9月号

饗場 聖子 (あいば せいこ)

一般財団法人日本経済研究所(『日経研月報』副編集長)

デジタルデトックスにどう向き合うか、試練の夏がやってきました。せめて学校が夏休みの間は、子どもからスマホ、ゲーム、タブレット等を離したいと切実に思う親御さんは多いのではないでしょうか。生まれながらにしてスマホネイティブで小学校入学と同時にタブレットを支給されるような状況にある今の子どもにとっては、デジタル機器に囲まれた生活は当たり前。だからこそ、普段は味わえないアナログな体験を夏の間に経験させたいと思うわけなのですが、デジタルの対語は「アナログ」だけではないようなのです。DX の文脈でいえば、いわゆるモノ、物体、実態のあるものとして「フィジカル」とも表現されるとのこと。私生活ではデジタルの恩恵に感謝しつつ、これらの言葉が意味する概念を念頭に、デジタル機器との付き合い方について改めて考えさせられる夏になりそうです……
さて、今号の特集は「デジタル化の新潮流」です。デジタルにはさまざまな捉え方がありますが、今回は昨年に企画した生産性特集の第2弾として、より製造現場に近いところに焦点を当てました。デジタルの進展だけを追うのではなく、特にデジタル化がリアル世界とどのように融合していくのかという観点で構成されています。平和の配当が消滅し、サプライチェーンの可視化やリアルと融合したデジタル化が進むなか、AI を活用したリアル世界とサイバー世界はどのように融合していくのか(篠﨑氏、関口氏)、米国の先端技術政策や製造業の動向を踏まえ、半導体を活用したDX 化・GX 化はどのように展開されていくのか(南川氏、吉田氏、青木氏)、さらに実際の取組事例として、世界に誇る関西のバイオ研究に産業界・アカデミア・官界連携で取り組む「BiocK」の先駆的な活動のご紹介(坂田氏)などを掲載しています。AI やDX 等は業種を問わず避けては通れない概念になってきていますので、それらを活用して何にどう取り組めばよいのか、企業の皆さまにとって何かしらのヒントになり得れば幸いです。

著者プロフィール

饗場 聖子 (あいば せいこ)

一般財団法人日本経済研究所(『日経研月報』副編集長)