地域の現場から
瀬戸内しまなみ海道の魅力再発見
2024年12-2025年1月号
地元経済団体が主催するファムツアーに参加した。コンセプトは「道後温泉から日帰りできる体験型ツアー」。愛媛のインフルエンサーとして、今治から尾道に至る瀬戸内しまなみ海道の魅力をお伝えしたい。
うず潮と造船ドック
主な移動手段は(株)しまなみが運営する急流観潮船だ。あまり知られていないが、今治サイドの最初の橋である来島海峡大橋の周辺海域は、うず潮の名所である。徳島・鳴門まで行かずとも、無数のうず潮を至近距離で見ることが出来てお得。さらに今治造船(株)をはじめとするドック群にも接近、建造中のタンカーを拝むことができる。
芸予要塞で戦史を感じる
大橋の左下に位置する小島(おしま)は、日露戦争前にロシア海軍の瀬戸内侵攻に備えた砲台が築かれ、「芸予要塞」の名で知られている。中腹にある兵舎や砲座跡、頂上の司令塔まで、全て人力で資材を運んだそうだ。
幸いロシア艦隊の侵入は無いまま日露戦争は終結、要塞は役割を終えることになる。
巨費と労苦を投じた痕跡を目の当たりにし、明治日本が列強に抱いた強烈な危機感を実感する。そして今、ウクライナや中東で起きていることを想起し、心が揺さぶられた。
塔頂体験の浮遊感
続いて馬島(うましま)に上陸し、本四公団の方のガイドで、三連吊り橋の頂上へ向かう。ヘルメット着用、荷物は持ち込み禁止、携帯電話や眼鏡はストラップ着用という厳重さだ。主塔のエレベーターで頂上へ向かい、いざ外へ。
高所は苦手で緊張していたのだが、程良い高さに厚い壁が設置されていて、恐怖感は殆ど感じなかった。頂上からの景色はまさに唯一無二で、空と島と海を独り占めした気分に。一生に一度は体験すべきと断言できる。
ゆるサイクリング
しまなみ街道はサイクリストの聖地と言われて久しいが、装備や体力面から二の足を踏む向きも多いのでは。実際、橋に上るまでの自転車専用道路はかなりの勾配である。本ツアーでは、橋脚内部のエレベーターを利用してレンタル自転車を橋の上まで持ち上げ、ほぼ平坦なルートを数キロにわたって楽しめる。子供やお年寄り、或いは十分に時間が取れないケースでも、両サイドに海と島々を眺めながら風を感じる、爽快なサイクリング体験が可能である。
その後、海鮮バーベキューで遅めの昼食の後、隈研吾氏の設計による「亀老山展望台」を経由して松山・道後温泉に帰着。行程に詰め込まれた印象は感じず、しまなみを巡る体験型観光の底力を感じた一日であった。
これらは今治周辺のほんの一部に過ぎない。是非、ご自身の興味関心に沿った旅程を組み、楽しんで頂ければと思う。