「起業家が創り出す新しい未来」第1回 DBJ-iHub&SHIBUYA QWS共催セミナー開催報告

2021年7月号

<パネリスト> 鮫島 弘子   (さめじま ひろこ)

株式会社andu amet  代表取締役

<パネリスト> 田中 美和 (たなか みわ)

株式会社Waris  代表取締役

<パネリスト> 文美月 (ぶん みつき)

株式会社ビューティフルスマイル 代表取締役

DBJ 女性起業サポートセンターは、「女性の起業活動により、経済・社会の活性化、構造改革を促す。」ことを目標に掲げ、2011年に開設されました。「DBJ女性新ビジネスプランコンペティション(以下、DBJ コンペ)」の開催、DBJ コンペファイナリストへの成長支援や啓発活動などを行っています。

過去8回開催したDBJ コンペ(累計応募総数2,556件)を勝ち抜いた各回の受賞者やファイナリストは、社会や経済に変革をもたらすビジネスプランを事業として確立させ成長を遂げている方々が多く、本連載を通じて、読者のみなさまにも広く知っていただきたいと考えています。

今回は、2021年3月16日に国内屈指の共創施設であるSHIBUYA QWS2との共催セミナー「女性起業家が創り出す「新しい」未来とは??」に登壇した女性起業家3名について、各事業や当セミナーのパネルディスカッション等で語られた概要を、ご紹介します。

当セミナーに登壇した女性起業家の3名はいずれもDBJ コンペの歴代ファイナリストで、それぞれエチオピアや東京・大阪を拠点として、ゼロから起業して事業基盤を確立し、長引くコロナ禍に立ち向かいながら、社会課題の解決に繋がる特色ある事業を展開しています。

基調講演後パネルディスカッションの様子

■ 鮫島弘子  (株)andu amet  代表取締役

鮫島氏は、国内化粧品メーカーのプロダクトデザイナーの職を経た後、青年海外協力隊としてエチオピアに赴任しました。そこで目の当たりにした貧困や格差の課題を解決するため着目したのが、世界最高峰の素材といわれているエチオピアン・シープスキンです。現地の人々が援助ではなく自助努力で外貨を獲得できるよう、現地に直営工房を作り、この工房で現地の女性の手により製造された製品を、主に日本向けにオンラインで販売しています。これらの功績が称えられ、APEC Young Innovator Award、カルティエチェンジメーカーオブザイヤー等、多くの賞を受賞しています。2018年には東京・青山に直営店舗も出店しました。スターバックスコーヒージャパン㈱とのコラボ商品等も手掛けています。

当セミナーで鮫島氏には、エチオピアからの中継で登壇いただきました。民族間闘争が止まぬ状況下でコロナが直撃しているなか、エチオピアでの事業活動を紹介いただきました。具体的には不衛生な環境にある現地の方々に対してマスクを縫製して配布する等々、コロナ禍においても現地の人々と共生しながら事業成長を続けています。途上国の貧困や格差の課題に真正面から向き合い、現地の方々と共に解決を目指していることに共感を覚えた視聴者も多かったものと思います。

 

■ 田中美和 (株)Waris  代表取締役

田中氏は、「日経ウーマン」編集記者として延べ3万人以上の働く女性を取材・調査した後、自分らしい生き方を実現する人を増やすことで希望に満ちあふれた社会をつくっていきたいという理念のもと、女性の多様な働き方を実現する人材エージェント会社を知人3名で創業しました。フリーランス女性と企業のマッチングを主軸事業とし、登録者約18,000人・登録企業約1,700社を擁する企業に成長させています。現在、田中氏は東京を拠点としていますが、他の共同経営者はベトナム・福岡に居住しています。

当セミナーで田中氏には、コロナ禍においてリモートによる共同経営をどのように運営しているのかを中心に、プレゼンしていただきました。当社では、共同経営者の互いの結婚や出産、配偶者の転勤による環境変化にも協力して向き合い、3拠点を結びながら従業員30名のマネジメントを含めたリモート経営を維持しているそうです。当社の共同経営者が実践している女性の多様な働き方は、“ジェンダー平等”や“働きがいも経済成長も”というSDGs の考え方にも通じるものがあり、当社の事業は、これからの女性の更なる活躍の可能性を感じさせるものであったと思います。

 

■ 文美月 (株)ビューティフルスマイル 代表取締役

文氏は、日本生命保険相互会社で女性総合職として活躍し、結婚・出産による退職後のキャリアに悩んだ末、自ら起業しました。自ら企画・製造した商品を卸売業者や販売代理店などを通さずに、当社EC サイトを通じて直接消費者に販売するDtoC でヘアアクセサリー等約450万点を扱う事業を展開しています。受賞確率1%以下といわれる楽天市場「Shop of theYear」を3度受賞するなど、EC 業界アワードを多数受賞しました。2010年より、使われなくなったヘアアクセを日本全国で回収し、発展途上国の少女に寄贈する活動を開始(累計4万点超)しています。この活動から着想を得て、国内の最も「もったいないもの」を減らすべく、一念発起して2018年に2度目の事業を起業し食品ロス削減事業「ロスゼロ」を立ち上げました。今では、食品ロス削減のため、メーカー側で出荷されずに廃棄されている商品・食材に、新たに流通を生み出す(EC サイトを立ち上げて消費者とつなげる)ことを事業化しています。

文氏には、社会的不安の今だからこそ、社会課題解決型ビジネスで見落とされがちな収益化の観点についてプレゼンしていただきました。初めの事業で実績を積み上げ、起業家として各種委員や講師等を務める立場にあったなかでの第二創業であったため、プレッシャーや相当な葛藤があったそうです。起業にいう手段によって、新たに社会的価値と経済的価値の両方を生み出している点に価値があり、文氏の挑戦し続ける姿勢は、視聴者の方々を勇気づけたことと思います。

 

■ セミナーを終えて

今回のセミナーは、コロナ禍に立ち向かっている女性起業家や起業を志す方々に対して苦難を乗り越える一助になりたいとの思いから開催されました。DBJコンペに過去ご応募頂いた方々や女性起業サポートセンターの発信する情報提供を希望される会員に加え、SHIBUYA QWS に集う起業家や起業を志す学生・会社員・フリーランス等の方々に対しても告知を行いました。

注1  2012年より計8回開催。各回の大賞受賞者には最大1,000万円の事業奨励金を支給するほか、受賞者・ファイナリストに対し成長に向けた事後支援を実施。
注2  渋谷スクランブルスクエア(渋谷駅直結)に2019年11月に誕生した「渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点」をコンセプトに、多様な人々が交差・交流し、社会価値につながる種を生み出す会員制の共創施設。

著者プロフィール

<パネリスト> 鮫島 弘子   (さめじま ひろこ)

株式会社andu amet  代表取締役

<パネリスト> 田中 美和 (たなか みわ)

株式会社Waris  代表取締役

<パネリスト> 文美月 (ぶん みつき)

株式会社ビューティフルスマイル 代表取締役